幼いコーちゃんを失ったママの再生物語です。
幼いコーちゃんを失ったママの再生物語です。

ささかーまちゃんは、ワクワクしながら待(ま)っていました。

このおうちでは、どんな人(ひと)が私(わたし)を食(た)べてくれるのかしら」

ささかーまちゃん

ささかーまちゃんは宮城県(みやぎけん)の名物(めいぶつ)、

笹(ささ)かまぼこの女の子。

しっとり、ふわふわして、とってもおいしいのです。

「でも、おかしいなあ…。
もう2日も経っているのに、まだ誰(だれも)も食(た)べにきてくれない」

ささかーまちゃんは不思議(ふしぎ)に思って、
台所(だいどころ)をでて、ほかの部屋(へや)をのぞきにいきました。

ママの部屋2

するとそこには、女(おんな)の人(ひと)が

こちらに背中(せなか)をむけてすわっていました。

肩(かた)が小さく震(ふる)えているようです。

「どうしたのかしら?」

女(おんな)の人(ひと)は、
ちいさな男(おとこ)の子(こ)が写(うつ)っている写真(しゃしん)を見つめて、
泣いているのでした。

「あの日、ママはコーちゃんの手をはなしてしまったんだよ」

ささかーまちゃんがビックリしてふりむくと、

そこにはサカナンカンが立っていました。

shinbun

いつのまにきたのでしょう。

サカナンカンは、だいたいどこのおうちでも、戸棚(とだな)の中にいるおいしい魚(さかな)のかんづめです。

ささかーまちゃんといっしょにへやをのぞきこみながら、

サカナンカンがいいました。

「しかたなかったのさ。でもママは、あの日(ひ)から、

ずっと自分(じぶん)をせめつづけているよ」

「あの日(ひ)」がどの日(ひ)か、ささかーまちゃんにもすぐにわかりました。

thk01

ささかーまちゃんたちが住む東北(とうほく)地方(ちほう)を

大きな地震(じしん)と津波(つなみ)が襲(おそ)った「あの日」。

たくさんの家族(かぞく)やおともだちが、
あの日(ひ)いらい、はなればなれになってしまいました。

家(いえ)や服(ふく)や大切(たいせつ)なおもちゃなんかも、

みんな波(なみ)にもっていかれ、

海(うみ)にしずんでしまったのです。

サカナンカンの話(はなし)では、
この家(いえ)のこどもだった4歳(さい)のコーちゃんも、

ママといっしょににげるとちゅうで、

おおきな波(なみ)につれていかれてしまいました。

「この家にはもともとパパがいなかったからね。

コーちゃんは、ママとおじいちゃんに

ずっと大事(だいじ)に育てられてきたんだよ」

あの日もママは、いっしょうけんめいコーちゃんをまもろうとしたけれど、

波(なみ)の力(ちから)が強(つよ)すぎて手(て)が

はなれてしまったそう。

そのときから、コーちゃんと会えなくなってしまいました。

「このままではママのこころが

こわれてしまう」

また別(べつ)の低(ひく)い声(こえ)にビックリしてふりむくと、

そこにはみそどんがいました。

みそどん

みそどんだけではありません。

わかめんぬにジザケーさん、ほや~んにももいさん、シジとジミも

心配(しんぱい)そうな顔(かお)つきでたっています。
あ、ずんだもちのずんだボンもいました。

tohoku27-2

みんな、おじいちゃんがママを心配(しんぱい)してかってきてくれた

東北(とうほく)のおいしいものたち。

みそどんが続けます。

「あの日(ひ)以来(いらい)、ママの頭(あたま)の中(なか)は、

どうして?どうして?で、いっぱいなんだ。

どうして手(て)を離(はな)してしまったんだろう?

どうしてコーちゃんがいなくなってしまったんだろう?

どうしてコーちゃんのかわりに

じぶんがいなくならなかったんだろう?ってね」

みそどんはこの家(いえ)に長(なが)くいるからわかるのです。

「かんがえてもかんがえても、答(こた)えがでないから、

ママのこころはとうとう勝手(かって)に、うその答(こた)えをつくりだしてしまった。
 コーちゃんがいなくなったのは、ママのせいだって」

ささかーまちゃんはおどろいて

「そんなはずないのに!」とさけびました。

みんなは台所(だいどころ)に戻り(もど)、輪(わ)になって考(かんが)えました。

「どうしたら、いいのかなあ?」

じぶんたちは、人(ひと)を助(たす)けるために

神(かみ)さまがつくってくれた

おいしいもの。

ママを元気(げんき)にしなくては、

じぶんたちの役目(やくめ)を

果(は)たせません。

それは、食(た)べものだけではないのです。

おてんとうさまも木(き)や花(はな)や雲(くも)も、
いい匂い(におい)を運(はこ)んでくれる風(かぜ)も。

絵本1

きれいな夕焼(ゆうや)け、
お星(ほし)さまだって。

tohoku31-4

みんな、ひとを元気(げんき)にするために贈られた

神(かみ)さまからのプレゼント。

だけど、心(こころ)がくらくなると

プレゼントが見(み)えません。

「どうして?どうして?」って
自分(じぶん)の声(こえ)が大きくなると
神(かみ)さまの「だいじょうぶだよ」って

声(こえ)がきこえなくなってしまいます。

「だいじょうぶだよ!」

そのとき大(おお)きな声(こえ)がして、

流(なが)し台(だい)のほうから、

ポーンと何(なに)かが飛(と)び出(だ)してきました。

みんなのわの真(ま)ん中(なか)に、ピチャっとみごとな着地(ちゃくち)をきめました。

みんな - コピー

「カキおじさん!」

知恵(ちえ)があってやさしいカキおじさんは、人気者(にんきもの)。
おるすの季節もおおいので、いつでも会(あ)えると限(かぎ)りませんが、
そこがまたカキおじさんの値打(ねう)ちをあげているのです。

一緒(いっしょ)にいるのはレモンちゃん。
カキおじさんが大好(だいす)きな女(おんな)の子(こ)です。

「うとうとしていたら、みんなの声(こえ)が聞(き)こえてきたものだから」

カキおじさんとみんなは、今年(ことし)初(はじ)めての

再会(さいかい)を喜(よろこ)びあいました。

「ところでカキおじさん。さっき、だいじょうぶって言ったけど、

何がどうだいじょうぶなの?」

ささかーまちゃんがたずねました。

そうそう、それそれ。

カキおじさんがウインクして、歌うように言いました。

「どんなに元気がなくっても、

おなかはすくようにできている」

「そうか!」
「そうだ!」

みんなも一緒に歌いだしました。

1tohoku-shinbun

わたしたちを食(た)べてくれればだいじょうぶ

今(いま)は笑(わら)えなくても

だいじょうぶ

いつかかならず元気(げんき)になれる

体(からだ)によくておいしいものを

いっぱい、いっぱい

食(た)べるんだ

そのときからみんなは、
今(いま)までよりもはりきって、

あめの日(ひ)もくもりの日(ひ)もはれの日(ひ)も、

山のもの
寒(さむ)い日(ひ)も涼(すず)しい日(ひ)も

蒸(む)し暑(あつ)い日(ひ)も、

tohoku5-6

ママが元気(げんき)になりますようにといのりながら

よろこんでママのからだのなかに入(はい)っていきました。

tohoku9-2

ある朝(あさ)、ママはふと家(いえ)の外(そと)に出(で)てみました。
おてんとうさまの光(ひかり)がまぶしくて、
アッと目(め)をほそめます。

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何日(なんにち)ぶりでしょう。
とても長(なが)い間(あいだ)、

ママは家(いえ)の中(なか)に閉(と)じこもっていたのです。

すこしずつ目(め)をあけていくと、
イチョウの木(き)が、黄色(きいろ)くなっているのがみえました。

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「もう秋(あき)になってしまった……。

どうしてわたしは、まだ生(い)きているのだろう?」

ママはそのまま家(いえ)のカギもかけずに、

トボトボと歩(ある)きだしてしまいました。

いったいどこへ行(い)くのでしょう。

おそらの雲(くも)も
おてんとうさまも
川(かわ)も
すすきも
みんな心配(しんぱい)そうに見(み)つめています。

ママ、こっちをみて!

うえをむいて!

でもママには、みんなの声が聞こえません。

ママは川(かわ)べりの道(みち)を歩(ある)いて歩(ある)いて、

その先(さき)にある森(もり)の中(なか)に入っていきました。

2図 

ここは、コーちゃんが大好(だいす)きだった森(もり)。

ママはよく、ここでひろったどんぐりやまつぼっくりで、

コーちゃんのためにお人形(にんぎょう)をつくってあげました。

ママが作(つく)るお人形(にんぎょう)はとてもかわいくて、

コーちゃんのおきにいりだったのです。

だけど、今(いま)のママには何(なに)も見(み)えないみたい。

ふらふらとした足取(あしど)りで
奥(おく)へ奥(おく)へと入っていきます。

ママの心(こころ)はコーちゃんのことでいっぱい。

いっしょに暮(く)らしているおじいちゃんや

仲(なか)がよかったおともだちのことも、

そばにいる人のことは、みんな忘(わす)れてしまっているようです。

だってママは、コーちゃんのことが大好きだったから。

さみしいさみしい
さみしいさみしい

「コーちゃん、まってて。ママ、コーちゃんのところにいくからね」

その時(とき)でした。

お空(そら)から、ママの頭(あたま)に

コココンコーン!

となにかがふってきてはねました。

「イタッ」

ママが地面(じめん)をみると、

そこにはまつぼっくりとどんぐりがおちていました。

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ママはハッとして、ふたつを大事(だいじ)そうにひろいます。

だってそれはコーちゃんが、大好(だいす)きなものだったからです。

ママはしばらくたちすくみましたが、

とつぜんくるりと向(む)きを変(か)え、

森(もり)の中(なか)の来(き)た道(みち)をトボトボとひきかえしていきました。

夜おそく、おふとんの中(なか)にはいっても、

ママは、いつもねむることができません。

だけどこの日(ひ)は、少(すこ)しだけウトウトして

目の前に、なんとコーちゃんがあらわれたのです!

ママはうれしくてうれしくて、コーちゃんをだきしめようとしたけれど、
コーちゃんは、なんだかそれどころではないみたい。

「ママー、ママー、
おズボンがはいらないよ。
おズボンが小(ちい)さくなってはいらなくなったから、
もっと大(おお)きなおズボンを出(だ)してよー」

コーちゃんはそう言(い)って、

早(はや)く早(はや)くとママをせかしました。

図1

また次(つぎ)の場面(ばめん)では、
いつものようにコーちゃんが「肩車(かたぐるま)をして」と
ママにせがんできました。

ママは「はいはい」といって立(た)ちあがろうとしましたが、
コーちゃんが大(おお)きくなっていたので、

重(おも)くて立(た)ち上(あ)がれません。

ふたり一緒(いっしょ)にバタン!と

後(うし)ろ向(む)きに倒(たお)れてしまったのです。

ふたりとも、ワハハハハハと大笑いしました。

そこでママはハッと目をさましました。

夢(ゆめ)でも、コーちゃんに会えたことがママの胸(むね)を温(あたた)かくしています。

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コーちゃんは生(い)きていた。
神(かみ)さまのもとで暮(く)らしている。

地震(じしん)もない
津波(つなみ)もない
戦争(せんそう)もない

一番(いちばん)安全(あんぜん)で、安心(あんしん)な場所(ばしょ)で
コーちゃんは守(まも)られて

生(い)きている!

ふとんの中(なか)で起(お)き上(あ)がった瞬間(しゅんかん)、
ママの目(め)からウロコのようなものがポロリとはがれおちました。

あさ早(はや)く、ママは「あの日(ひ)」以来(いらい)、

初(はじ)めて台所(だいどころ)に立(た)ちました。

トントントントン

tohoku7-4

グツグツグツグツ

tohoku8-2

大(おお)きな音(おと)をたてないように注意(ちゅうい)して
おいしいお料理を作(つく)ります。

まだ眠(ねむ)っている、おじいちゃんのための朝(あさ)ごはん。

コーちゃんが大好きだった

ジイジのための朝(あさ)ごはんです。

tohoku10-2

Thanks to Miyuki&Kouga